映画「シリアナ」

渋谷の映画館で「シリアナJ」という作品を見た.「石油・
CIA-アラブがからんだ話」という程度の予備知識しかなかっ
たのだが、映画が始まって監督や役者の名前が出てくるとこ
ろで、原作が【See No EviIJ(悪を見す)だとあるのを見て、
内容が分かった。1月24日の本欄.’に、私がその日に二ユー
ヨークの書店で買った本のリストが掲げてあるが、そこにこ
の本の名前が含まれている.副題は「The True Story of
A Ground Soldier in The CIA's War on Terrorism] (CIA--
でテ口と戦う地上兵士の実話)で、この本の日本語版の題は
r CIAは何をしていた?」(0バート.べア著/佐々田雅子訳、
新潮社、2003年)という。映画の内容も、そういう政治
色の強いものだった。

2時間以上の映画だが、ストーリーはアメリカとアラブの
地で同時併行的に展開していく上、3一4人の異なった登
場人物の視点から重層的に描かれていくので、複雑でわかり
にくいことは否定できない。しかし、そのことが却ってリア
リテイーを生み出している。なぜなら、現実は複雑でわかり
にくいからだ。これらの人物とは、CIA工作員、工ネルギー.
アナリスト、ノてキンス夕ンからの出稼ぎ労働者、そしてワシ
ントンの法律家である。通常はあまり関係のなさそうなこれ
らの人物が、【テ□リズム」という現象を媒介として皆つな
がって描かれている点が興味がある。

ノンフイクションの原作をべースにし、監督もリアリズム
を追及しているから、前に本欄*aで取り上げた「亡国のイー
ジス」のような.肩すかしーは食わされなかった。私は「平和」
r1m境」【資NJ述べてきたが、の問題は今日、互いに密接に関
連しているとこの作品は「環境」を除いた残り2つの問題の関連
をよく描いている。さらに、そこに「貧困」と「悪政]の要素を
加えて説得力のあるものになっている。こく簡単に
言うと、テ□リズムが生まれる背景には。少数がとてつもなくく
豊かな王国にいる、とてつもなく貧しい人々の絶望感があ
り、この悪政を守っているのが国益優先のアメリカの対外政
策だーというのが監督の訴えようとしている点だろう。こ
こでテ□リストは、家族と同信の仲間のために-巨悪-を狙っ
て自爆する純粋な少年として描かれている。